21世紀型の幸せ人生の学び方・育て方③自分の強み(長所)を見つけ育てるMI活用のススメ

皆さんはご自分の中にどんな能力が隠れているか、知りたいと思いませんか?

前回の記事で、「長所(強み)の見つけ方」についてお伝えしましたが、今回はその方法のひとつとして、私が大学院の授業でも毎年必ず伝えているMIについて取り上げたいと思います。

MIとは?

MIはマルチプル・インテリジェンス(Multiple Intelligences)の略で、ハーバード大学のハワード・ガードナー教授(1993年当時)が提唱され、現在では世界の様々な教育現場で活用されています。日本ではまだ欧米ほど浸透してはいませんが、「多重知能」と訳されています。
内容を簡単に説明すると、
・人が生まれながらにして持っている力を8つに分類
・その能力の強弱(でこぼこ)は、個性と同じく、みな違う
・それを生かして伸ばすことでより良い学びを実現できる
というものです。

*注釈:Gardner, H. (1993) Multiple intelligences: The theory in practice. New York: BasicBooks.

MIのピザ

8つの分類は、「MIのピザ」と呼ばれる円形で示されます。

『マルチ能力が育む子供の生きる力』トーマス・アームストロング著、小学館2002年より作成
『マルチ能力が育む子供の生きる力』トーマス・アームストロング著、小学館2002年より作成

自分の得意分野を3つ見つけて伸ばそう

この分類を観て、いまの自分はどの分野が強いと思いますか?また幼いころからの体験から「これが強そう」と思い当たることはありますか? 下の表の中で「自分はこれが結構得意かもしれない」と思う分野を3つ選んでみてください。

もしかして、「3つもない」「1つしかない」なんて人はいますか? だとしたら、それは自分に厳しすぎます。ここはちょっと自分に甘くして、隠れている能力を引っ張り出すつもりで3つ選び出してみましょう。そしてそれらを意識的に伸ばしていくのがお勧めです。

MIの生かし方

では、その見つけ出した力を生かすおススメの学び方をご紹介します。

ご自分に思い当たることはありませんか?これまでも様々な学習活動の中で、無意識な内に実はご自分の中で得意な能力を駆使してきたのかもしれませんね。そしてこれからはそれをさらに意識して伸ばしていくことでさらなる能力発揮が望めるのです。ぜひ活用してください。

活用例1)英単語の覚え方

皆さんは暗記は得意ですか?苦手という方は、おそらくこれまで「得意な方法に出会っていない」ということではないかと思います。記憶の仕方は人様々なので、得意を生かした方法を見つけ出し活用することが大切なのですが、皆さんは期末試験前に英単語や歴史の年号などの暗記をする時はどんな方法を取り入れていますか?

「暗記する」という行為をMI(マルチ能力)の視点で捉えると、まず「記憶力=知識を持つ=思考力の一つ」とし、MIによるアプローチでそれぞれの得意分野を生かして「覚えやすい領域」を活用すれば誰でも記憶できるはず、と説明されています。

例えば、英単語のスペルの暗記は従来は言語能力(聞く、言う、書く)に偏重しがちでしたが、それ以外の方法がマルチ能力の分野別に推奨されています。ただし以下は米国の小学生向け分類なので、高校生の皆さんは自分なりにアレンジしてみてくださいね。

活用例2)学習における問題解決方法

学習における問題解決能力についても、マルチ能力の視点では「5段階の問題解決ステップ:設定、分析、解決選択、実行計画、実行後評価」と捉えられており、以下が推奨されています。

以上、いかがでしたか?

どんな人にも必ず能力(知能:インテリジェンス:Intelligences)はあり、その強弱を自分でしっかり把握して、より強みを生かして幸せな人生の実現に向けて進んで行ってくださいね。

保護者の皆さんへ

MIチェックは成長段階によっても変化することがあります。お子さんが幼い頃に得意だったこと、時間を忘れて没頭していたことなどがあれば、ぜひ伝えてあげてください。恐らくその分野の能力が非常に高いだろうと思われます。

また、今と比べて「良くなっていること」「伸びたところ」があれば、ぜひそれも伝えてあげてください。マイナスではなくプラスを伝えることで、より能力が伸びやすいと考えられていますので、ぜひそれを実践してみてください。

永堀宏美

参考文献

1.『マルチ能力が育む子どもの生きる力』トーマス・アームストロング著、吉田新一郎・他訳、小学館2002/3/1(残念ながら絶版、図書館等で探してみてください)

2.”You’re Smarter Than You Think: A Kid’s Guide to Multiple Intelligences” (英語) ペーパーバック – 2002/12/1,Thomas Armstrong (著), Jennifer Brannen (著)(平易な英語で書かれた子ども向けのMIの本:子どもが自分で長所を見つけられるようガイドしている)