『人生100年時代』の学び方ーこれまでとはどう違う?

高校の学期末テストや大学入試対策として「主要5教科」(国語、英語、数学、社会、理科)に集中して勉強するのは、戦略としては間違っていないと思いますし、実技科目(音楽・美術・保健体育・技術家庭)よりも入試科目に重点を置いた授業構成を実施している高校も多いでしょう。
その分、どうしても実技科目に皺寄せがいき、気を抜いてあまり真面目に取り組まない風潮は否めないと思います。
しかし、ここでぜひお伝えしておきたいのは、これからの『人生100年時代』ではそれではあまりにもったいない、残念なことになる、ということです。
(参考文献:『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)ー100年時代の人生戦略』 リンダ グラットン (著)、他、2016年刊、文末参照)

まだ10代の皆さんにとって『人生100年時代』はピンと来ないかもしれません。
しかし、ひとつ確実なことは、これまで以上に長い人生がこの先に待っている、ということです。

そうなると、
・人生100年を健康で笑顔で幸せに暮らすには何を学んで身に付けておくとよいか?
・自分らしい100年を実現するには、何を学び誰に会いどんな本を読んでどこに行けばよいのか?
・やりたいことを見つけて伸ばすには何をどう学んでおくとよいか?
・人生100年を経済的に支えるには何が必要か?

という視点に立った学び方が必要になります。明らかにこれまでとは異なるアプローチではないでしょうか。

実技科目の学びは未来に生きてくるー「主要5教科」にとらわれない学びのすすめ

そうは言っても、いま高校生の皆さんがご自分の60代以降のシニアライフを想像するのは、不確定要素も多過ぎて難しいかもしれません。
そこで目の前の現実的にできることとして、目先のテストや入試の制度や制約に囚われずに学ぶ視点を持つこと、つまり「主要5教科」にとらわれない学びも大切にする、ということをぜひお伝えしておきたいと思います。
もちろん入試直前に無理にということでは決してなく、時と場合に応じてご自身で調整していただくものですが、できるだけ日頃から実技科目を受ける際には「これをどう学んでおくと将来に生かせそうかな?楽しめそうかな?」という視点で取り組むことを強くお勧めしたいのです。

なぜ実技教科にこだわるかと言えば、
100年も生きるのなら、できるだけ最後まで「健康で笑顔で幸せな人生」にしたいですよね?
そうなると、実技科目の音楽・美術・保健体育・技術家庭がとても大事になってくるからです。
「健康・笑顔・幸せ」人生で実現するために必要なものはなんでしょうか。
健康な身体づくりのためには運動の習慣付けやバランスの取れた食生活が推奨されますし、音楽や芸術を楽しむ自分なりのコツを掴んでいれば、より豊かな時間を過ごせ人間性も高められます。

10代の受験期や20代から50代の仕事期には、確かに「主要5教科」の基礎知識や応用力が重要視されますが、人生を長いスパンで観ると、むしろこれら実技科目こそ大切、ということが分かります。
「60代以降に整形外科のお世話にならない人生を送りたければ、遅くとも50代までにウオーキングや筋トレなど日常的な運動習慣を身に付けて、健康な身体づくりをしておくべし」という医師や専門家の言葉も良く耳にしますし、
「私たちの身体は食べたものからできている」ため食生活や基本的な家事テクニックも大切なポイントです。
つまり、実技科目の音楽・美術・保健体育・技術家庭は『人生100年時代』を充実させるには欠かせないものなのです。これらを自分の興味に引き付けて学んでおくほど人生はより豊かで素晴らしいものになる、というのは、皆さんの周囲のシニア世代を見渡しても一目瞭然だと思います。

さらに、運動習慣をつけることで学業成績全般が向上することは、既に論証されています。米国の大学院時代、博士課程の最終過程の院生たちがほぼ毎日ジョギングしていた姿を思い出します。彼らの優秀な頭脳は心身を鍛えることでも支えられていたのですね。

(参考文献:『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』 John J. Ratey (原著), Eric Hagerman (原著),2009刊、文末参照)

人生100年のライフ&キャリアに向けてなにを学んでどう生かすか

18歳で高校を卒業する場合、『人生100年時代』ではその先が82年間あります。何をしますか?何に取り組みたいですか?これまでの人生の5倍近い年月が皆さんを待っています。

22歳で4年生大学を卒業する場合、そこからまだ人生は78年間もあります。
そして22歳から社会に出て働く場合、いま高校生の皆さんが定年を迎えるころには70歳定年になっている可能性もあり、社会で48年間も働くことになります。(現在の60歳定年制は5年後の2025年には65歳定年となり、来年2021年からは「希望すれば」ですが最長70歳まで定年延長できることになります)以前より公的年金は減額されており、ほんの少し前まで「55歳で定年を迎え余生を楽しくのんびり生きる」という働き方ではなくなっています。

社会人としての48年間、20代から50代はどんな仕事をしたいですか?どんなキャリアを築いて60代以降に備えたいですか?
日本の高度成長期以降の慣行であった終身雇用制はなくなり、ITの発展と共にこれまで存在しなかった職業や職種も多く生まれ、若年起業も増えています。さらに、時代の移り変わりのスピードは益々加速しており、いまの10年の変化は19世紀の数倍の進み方だとも言われています。2007年に初めてiPhoneが発売されてわずか13年の間に、大学生の就活も日々の献立決定にもスマホなしでは考えられない状態になるとは、誰が予測したでしょうか。

名の通った大学に行けば就職も将来も安泰、という時代ではありません。変化の激しい世界で今後どのようにキャリアを形成していけばよいのか。自分という人材をどう育てていくのかー自分の個性をしっかり把握してそれを生かす方向を見定めた生き方を、自分で探して見つけて育てる必要があります。
また、経済的な側面から「稼ぐ」という感覚も、「お金は誰かの役に立つことをしたお礼」(注釈:文中の和田裕美さんより引用)という観点から、また違った世界観で人生をとらえなおすこともできます。
(参考文献:『人生100年時代の稼ぎ方』 、勝間和代 (著), 久保明彦 (著), 和田裕美 (著)、2019年刊、文末参照)

そしていま最も注目されるのは、キャリア形成におけるアートの要素が重要視され始めていることです。ひところは米国でMBAを取ることがビジネスのキャリアップの通行手形のように言われていましたが、いまではアートへのより深い知識と経験が求められているそうで、実技科目における学びの重要度はさらに増していると思われます。
(参考文献:『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」』~ (光文社新書) Kindle版、山口 周著、2017年、文末参照

「学校では教えてくれない」は本当?

本のタイトルに「学校では教えてくれない」とつけるとよく売れる、と聴くと、私はちょっと複雑な気持ちになります。確かに、そのものズバリの内容は教科書に載っていないかもしれないし、教室で最新のトピックを扱う機会は多くはないかもしれません。しかし、読み書きそろばんを含め、基本的なものの考え方や正解に至るアプローチについては、学校では教えているし、皆さんも日々教室でそのトレーニングを積んでいるだろうと思います。

例えば経済的なお金に関することやコミュニケーションなど、もっと学校でも積極的に強化として取り組んで欲しいと思うトピックもたくさんありますが、公教育の中で最低限必要なものとして、皆さんの授業カリキュラムは組まれています。
ですから、そこからどう応用して生かしていくかは、皆さん次第です。「教えてくれない」と嘆く気持ちをいったん脇に置いて、ぜひ「どうやってこのトピックに取り組んだらいいかな?」と自分なりのアンテナを張って、学んで行ってもらえたらと思うのです。

そしていまの皆さんに最も大切なのは、「学ぶことを楽しむ」という感覚を高校生の内に身に付けることだと思います。いま勉強がツマラナイ、面白くない、と感じる皆さんは、まだご自身に最適な学習方法に出会っていないだけであり、学ぶこと自体は人としての本能に根差したものであるので、どんなことでも少なからず人は「学びを楽しむ」要素を持って生まれています。一日も早く皆さんがご自身に合った学び方を見つけ出し、楽しめる要素を見出せるよう願っています。


*トップのアイキャッチ画像は副業カメラマンのkikutti_さんのご厚意で掲載させていただきました。素晴らしい写真を使わせていただき有難うございます。なお転用等をご希望の場合はひとことご連絡を差し上げてください。


*参考文献*
・『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)ー100年時代の人生戦略』 リンダ グラットン (著), アンドリュー スコット (著)、2016年刊

・参考文献:『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』 John J. Ratey (原著), Eric Hagerman (原著),2009刊)

・『人生100年時代の稼ぎ方』 2019年刊
勝間和代 (著), 久保明彦 (著), 和田裕美 (著)

・(参考文献:『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」』~ (光文社新書) Kindle版、山口 周著、2017年