このサイトでは、高校生の頃の私達に伝えたいこと、をテーマにしています。自身の高校生時代を思い返し、もし一つだけ伝えられるとしたら、「未来は予測不能だけど、それも含めて人生を楽しんでね」です。

教科書のウソとホント

高校までは教科書を中心に学習活動が行われ、試験問題もそれを基に作成されるので、試験前に必死に英単語や歴史の年表などを一夜漬けで丸暗記したり語呂合わせを念仏のように唱えて覚えたりした人も多いでしょう。私もそうでした。

ところが進学後に、教科書の執筆&編集に関わった教授陣の授業を受ける機会が何度かあり、その中で気づいたのは、高校&浪人時代に必死に暗記したはずの歴史年号や英単語の意味がまるで違うことでした。思わず「ウソ!」と叫んだことも一度や二度ではありません。

例えば歴史では、私は中高時代に大化の改新を645年と習いましたが、大学の講義では645年に限定することに異論あることを知って驚き、さらに時を経て現在(2020年)では『乙巳の変』(いつしのへん)という反乱の起きた645年は起点ではあるが、それ以降から701年の大宝律令に至るまでの50余年の一連の政治改革を『大化の改新』ということになっているのだそうです。極論を言えば、テストで645から701年までのどこを書いても正解だったんじゃないか!ってことです(参考記事:『大化の改新』が起こった理由は? 今は「645年」とは習わない!?)。

また英単語は、英英辞典を観ても分かるように、一つの単語にも様々な意味があることは分かっていたけれども、受験のときはとにかく1単語に1意味で暗記するのが精一杯でした。例えばminuteは「分」と中高では習いますが、複数形の minutesに「議事録」なんて意味があるのを知ったのは大学以降です。
またナイーブという日本語は「繊細で傷つきやすい人」でどちらかといえばプラスの意を含みますが、英語でこれを直訳してnaiveを使うととんでもないことになります。weblioによれば「(特に若いために)世間知らずの、単純な、純真な、だまされやすい、単純で、純真で、(特定の分野に)未経験な、先入的知識のない、甘い、素朴な」
マイナスの意がとても強いのです。実際にアメリカ人女性との初デートの際、これを言ったがために彼女に張り倒され人がいたとか。

歴史では未解明なことも多く、常に諸説あり、学説として多数決で納得した学者の多い年号を当時採用していたとのことですし、英語にしてもしかり。そもそも言語は時代や地域によっても用法は異なるし、言葉に込める意味は用いる人によってもニュアンスは異なって当たり前、多様な意味を使いこなせるようになれ、と言われたときは、確かにそれは日本語にも当てはまるけれども「そんな例外ばっかり覚えきれないよ」と、当時は英語嫌いでしたので、嘆き途方に暮れたのでした。余談ながら、まさかそれから20年後に英検1級に合格するなんて、本人でさえ予知不能でした。(詳細はHPご参照:英語学習顛末記 | 英語学習・グローバル教育)

決して教科書に嘘を教えられたわけではなく、説明を聞けば納得です。しかし、教科書を絶対と思い込んで必死に暗記してきた身には拍子抜けでした。

答えのない世界ー自分の「教科書」を自分で作る

「ではこのさき一体何を信じて学んでいけばよいのか」と、頭の中がはてなマークで一杯になった私に飛び込んできた言葉は、

  • 「世の中には常に諸説あり、真実は一つではない」
  • 「教科書は最適解を示しているに過ぎない」
  • 「唯一絶対の正解など存在せず、ヒントしかない」 でした。

教科書は、大学や学会などのアカデミックな世界で研究によって論証され、多くの人が納得した「すでに答えが確定したもの」を掲載しており、それを厳選し並べたものです。そして、後世の歴史的発見によって塗り替えられることはあるものの、掲載時点での検討され尽くした「結果の列挙」=「過去」です。未来を生きるヒントはあっても、未来を正確に導く「唯一絶対の正解」はないのです。あるのは最適解だけ。

ではなんのために教科書があるかといえば、これまで専門家によって検証されてきた結果を示すことによって、「様々な判断材料となる事実や知識をかき集めて正解にたどり着く」という「正解にたどり着くプロセス」を示しているのです。

高校生の皆さんに最も学んでほしいのはここです。

みなさんがこれから出会う未来について、何がどうなるのか、ある程度の論拠のある予測は巷にも溢れていますが、確証は一つもないのです。

未来世界は未だに予測不可能であり、その答えは教科書には載っていないけれども、先人が多くのヒントを示しています。成功だけでなく失敗も含めて、様々な試行錯誤を見せています。それらを参考に、いろいろなことを試しながら、みなさん自身がこれから新しい教科書を日々作っていくのです。さらに、万人向けの教科書だけでなく、皆さんそれぞれの個性を生かした自分専用の教科書も必要になります。

高校生のいまだからできること

15~18歳は、それまで蓄積してきた知識や思考と記憶力をセットにすることで飛躍的に学習能力が高まる時期とされています。単純な丸暗記だけではもったいない。脳内に一旦記憶して溜めた知識を引っ張り出して、自分なりに組み合わせて思考を巡らせ、判断して行動するという一連の流れが、皆さんの潜在力を引き出して磨き、未来への力を育てます。この方法については、瀧本哲史さんの著作が大変参考になると思うので挙げておきます。

『僕は君たちに武器を配りたい』 Kindle版 瀧本哲史 著

『武器としての決断思考』 (星海社 e-SHINSHO) Kindle版 瀧本哲史  (著)

予測不能な未来に向けて、自分で考え判断し行動する力を蓄えることができれば、それは必ず皆さんにとって強力な武器になります。

テストや受験は、高校生の皆さんにとって大きなストレス源だろうと思います。なければいいのにな、と思ってる人も多いでしょう。しかし、成長期の皆さんの様々な学習能力を刺激し伸ばすチャンスでもあると受け止めてももらえたらと思います。
そして、使えば使うほど脳は発達するので、いま最も成長が著しい高校時代に使わないと「損です」。ここは声を大にして叫びたいところです。(脳科学と学習についてはまた別の機会に。様々な良書が出ていますが、Kindle Unlimitedで読めるものをご参考までに以下ひとつに挙げておきます)

これまで得た情報や知識をかき集めて、自分の頭で考えて、判断して、行動して、その結果が成功でも失敗でも自分で責任をとって前に進むこと、それがいまの高校生の段階で最も重要かつ必要なことであり、いましかできない成長があります。どうかご自身の脳を駆使して栄養を注ぎ、さらなる成長を遂げ人生を豊かに実らせてください。
未来に幸多かれと祈ります。

『改訂版 東大に2回合格した医者が教える 脳を一番効率よく使う勉強法』 Kindle版
福井 一成 (著) Kindle Unlimited対象


*トップのアイキャッチ画像は、今回も副業カメラマンのkikutti_さんのご厚意で素晴らしい写真を掲載させていただき有難うございます。なお転用等をご希望の場合はひとことご連絡を差し上げてください。