はじめに

いよいよ入試の季節になりました。体調はいかがですか?しっかり眠れていますか? 例年にない環境での受験にはストレスも溜まりがちと思いますが、どうか皆さんの実力が思う存分発揮されますように、心からお祈りしています。そして、次なるステップとして、この受験で蓄えた力を未来に活かすためのヒントとして私なりに考えたことをお伝えしたいと思います。

なお、こちらは高校生用の短縮版になります。完全版はこちら

受験勉強で得た力はこれからの礎になる

入試に向かって、皆さんはこれまで時間と労力を掛けて、多様な知識を得たり、一秒でも早く計算できるように脳内回路を磨きあげたり、語彙を駆使して文章を書けるようにするなど、修練されてきたと思います。
本当によく頑張りましたね。まずはご自分に大きな拍手を送って下さい。
結果はまだ少し先のことと思いますが、ご自身を振り返り、しっかり労って心身を休めることは、次なる活力を得る上でもとても大切です。
もし反省点があるなら、それは未来に活かせばよいのです。過去は変えられない、けれども未来は自分で作り出すことができるのです。
そして、入試までに得た力は、未来の皆さんを形作る礎となってこれからの人生を支えてくれます。

情報の判断軸を磨こう情報の判断軸を磨こう

次なるステップは、皆さんが入試を機に記憶のポケットに入れてきた様々な知識や経験を活用するときです。そこで皆さんの潜在力と個性を活かし、さらに成長していく術とするには、様々な方法が考えられますが、私が特にオススメしたいのは、これからの情報化時代を生き抜くための情報判断力を磨くことに活かすことです。さらなる情報化の進む世界に生きる上で、それは未来の命運も左右するからです。

受験で培った知識と経験を生かして

以前の記事でもお伝えしたように、皆さんが学んできた学校の教科書には、多くの先人の知恵が詰まっています。歴史には過去の多くの過ちや成功が記され、古典文学には人生の喜怒哀楽が溢れています。「歴史は繰り返す」と言われますが、人類の負の歴史を教訓を生かしてよりよい未来を切り開き、先人の教えの中で活かせるものはぜひ活かしてほしいと思います。過去の大きな失敗も、皆さんに活かされることで昇華されるのではないかと思います。
また、「後世の歴史が判断する」という言葉もあるように、現代では偉人とされる方々でも当時は理解されず、世紀の大発明をしながら不遇に終わった、あるいは無名のままこの世を去りその技術や智慧が生かされるまでに時間がかかった、という偉人たちのエピソードはいくらでもあります。その時代にどのような情報が得られれば人々は正しい判断ができたのか、偉人の業績を当時皆で共有しさらに活かすことができるようにするには何が必要だったのか、などについても、ぜひ考えてみて下さい。
なんとなく周りがそう言っているから、という判断基準では、皆さん自身はもとより、周りの大切な人たちの知恵や経験を有益に活かすことができなくなります。一人でも多くの人が「なんとなく蔓延している大勢の勝手な価値観」に惑わされることなく、正確な判断ができる情報を得られるようにするために、ぜひこれまでの受験勉強で培った力を生かして下さい。

視野を広げ可能性を広げる多角的な視点

時代に合わなくなったものはどんどん若い皆さんの見識で塗り替えていって欲しいと思うのですが、その際に留意していただきたいのは、教科書に記されていたのはあくまで多数派&ある程度論証済なものに限られており、常に少数派は存在する、ということです。それを忘れずに、想像力を働かせて「見えない側面」にも思いを致してほしいと思います。

例えば、目の前の事象ひとつに対して、多数派の見方がAだとしても、もし別の方向から光を当てたらBになるかもしれなしし、実際にそれはBだと明言する少数派がいた場合はどんな見解なのか?と多角的に考える視点を持つことはとても大切です。

「ダイバーシティ」の本当の意味

多角的視点をもつことは多様性の許容、つまりダイバーシティにも繋がります。
ダイバーシティというと、ジェンダーやLGBTへの政策的配慮が優先的に思い浮かぶかもしれませんが、実際には多様性を許容することで、私達自身の可能性をさらに広げることが可能になるという、非常に広範囲に亘るエンパワーメント的な発想でもあるのです。
「◯◯だからだめ」「△△だからこれしないとだめ」という制約を、ダイバーシティの実現によって取っ払ってしまうことで、可能性に蓋をしている「見えない壁」を壊すことなのです。
同時に、真実は必ずしも一つとは限らないので、多角的多面的な視点で常に情報に目を向けることがとても大切です。それが誰にとっての真実なのかを考えること・知ることも大切ですし、その結果を自分の人生にどう活かすかという視点こそが、皆さんの判断軸を磨くことになるのです。

情報の真贋を見極めるのが情報化社会での命綱

真贋はどうやって見極めるのか?

皆さんは普段、どうやってネット情報内のフェイクを見分けていますか? 何度もググって、上位から並んでいる順番に信じますか? しかしSEOというテクニックの結果の順位でしか無いとしたら、それが信憑性とは全く異なる順に羅列されているだけだとしたら、何を基準に判断しますか?
現実社会ではたくさんの「正解らしき顔」をしたものが私達に迫ってきます。どれも本当に、もっともらしい様相を呈していて、検索してもどれが正しいのか即座に判断し難いものも溢れています。

正しい判断は正確な情報から

元になる情報が正確でなければ、正しい判断の材料にはなり得ません。ますます複雑化する情報社会に向かういま、情報の真贋を見極める力を磨くことは未来の命運を左右することになります。そのためにも、私達は自分なりの指標を持って、情報の正確さを判断し行動していくことが必須になります。

そのためにオススメしたいのは、必ず複数の情報源にあたり、多方面から光を当ててその姿を炙り出すことです。それを過去の知見とも照らし合わせて、少しずつ、「これなら信頼できる」というご自身の軸を育てていくことです。

すべてを疑って掛かると、なかなか前に進めないというジレンマもありますが、何を基準に判断すればよいかという自分なりの判断軸を確立するには、試行錯誤と経験の積み重ねが必要です。情報の信頼度や有効性は自分で判断して行動する、という視点を持って日々の情報に当たることが、将来への道をより盤石にします。

メディア情報を自分軸で咀嚼することが重要

情報の意味や伝わり方にも意識を向けよう

マスメディアから伝わった内容の真偽や信憑性について考えさせられた、NHKの現役ディレクターでもある高木徹さんの著作(以下参照)をご紹介したいと思います。高木さんは、これまでドキュメンタリーの賞をいくつか受賞されているのですが、その中で報道における「ニュースの真偽」について
『世界的ジャーナリストの常識として、どんなに視聴率が欲しくても「やらせ」は禁じ手であり、決してやってはならないことと認識され、一度でもそれをすればジャーナリスト界に居場所はないとされている』
という主旨を綴っておられます。
どんなスクープも必ず裏を取る、確証がなければ報道しない、を徹底しているからこそ、世界の人々に信頼される存在になっているのですが、それがご著書から痛いほど伝わってきます。残念ながら日本のメディアには、この「報道の信憑性」に対する感覚がまだ世界標準ではないとされることがあり、それを心して私達は日々の報道を自分なりに受取り咀嚼していく必要があります。

現代の戦争はPRが勝敗を決す

現代はまさに情報が武器になる時代であり、情報を制すものが世界を制す、を如実に記したのが、同じく高木さんの『国際メディア情報戦』『ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争』 です。情報が戦争の結果を支配したことが綴られています。報道の際の伝え方や言葉の選び方によっても、ニュースの意味が全く変わってしまうことが分かります。

東欧で起きたボスニア紛争は、紛争の当事者がそれぞれ優秀なPR会社に情報戦を依頼しており、つまりはPR会社同士の優劣が勝敗を決したのであり、情報を制するものが戦争を制する事実が明かされたことには、本当に驚きました。
(ちなみに、本のタイトルの「広告代理店」はもともとPR(パブリック・リレーションズ)にする予定が、日本ではなかなかこのPRが理解されないということで出版社判断で変更されたそうです。)

もしこの本を読まなければ、一方的に不利益な情報を世界メディアに掲載された敗者だけが悪者で終わった戦争、という印象が残り、戦後復興にも影響したことでしょう。本文にもありますが、「戦争ではどちらかが一方的に悪いということは滅多に無く、両者に言い分があり、責任がある」という視点が欠落し、PR合戦に負けた一方の国だけを感情的に叩くことにも繋がってしまいます。それが戦後復興への世界的な支援にも直結するのであれば、なおさらです。

国際メディア情報戦 (講談社現代新書) Kindle版 高木徹 (著)

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫) (日本語) 文庫 – 2005/6/15 高木 徹  (著)

以上、みなさんがこれまで受験勉強等を通じて培った力を、これからの情報化社会で生かしていただきたいとの願いを込めて贈ります。


*なお、今回のトップのアイキャッチ画像も副業カメラマンのkikutti_さんのご厚意で掲載させていただきました。「仙台城 金鵄(キンシ)像」「鵄とはトビのこと、日本書紀で、神武天皇の軍を勝利に導いたとされる金の鵄をモチーフとしているそうです」いまにも飛び立たんとする神々しい姿に、受験生の皆さんのご武運を祈ります。商業利用はお控え頂き、転用等をご希望の場合はkikuttiさんにも必ずご連絡を差し上げてください。

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この記事を書いた人

永堀 宏美
永堀 宏美

フリーランスの人財育成研修講師(コミュニケーション&プレゼンテーション)歴26年目。
早稲田大学大学院教育学研究科(旧・教職大学院)非常勤講師 2009 年度~2020年度(2020年度のみオンライン実施)
元茨城県牛久市教育委員長、講演・著述業など。
慶應義塾大学法学部卒業、某研究所勤務を経て筑波大学大学院地域研究科修士課程及び米国コーネル大学大学院都市地域政策学科修士課程修了。茨城県で2女を育てながら、長年に亘り教育・医療・行政分野等における人材育成の講演・研修を展開。最新刊『保護者トラブルを生まない学校経営を保護者の目線で考えました』教育開発研究所、2018 年刊
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