イエール大学の「幸福講座」とは
アメリカの名門校イエール大学で教鞭を取るローリー・サントス心理学教授が、MOOC(Massive Open Online Courses)のプロバイダーCourseraを通じ、無料で提供している”The Science of Well-Being”という講座のことです。https://www.coursera.org/learn/the-science-of-well-being
この記事は同講座の内容を担当ライターが個人的な見解も混え、高校生にも分かりやすいように解説したものです。従って同講座の内容に関する全著作権は、サントス教授および講座の提供者であるCourseraに帰属します。
登場人物
サヤコ
英語講師&コーチ。シドニーのマーケティング業界で長年働いた後、地元岡山で起業。10代の学生をサポートしながら、自らも「人生100年時代」におけるベストな生き方を模索中。
ヨウタ
サッカー部所属の高校2年生。海外に興味があり、留学するのが夢。なりたい職業はまだ決まっていないが、出世はしたい!と思っている。趣味はゲームとスポーツ観戦。
アケミ
演劇部所属の高校1年生。将来の夢は作家だが、親には収入が安定している公務員か看護師になれと言われている。入学祝いにスマホを買ってもらってから、ちょっと寝不足気味・・・。
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引き続き、マインドの「困った習性」を理解しよう
アケミちゃん、ヨウタ君、こんにちは!まずは先週のおさらいね!覚えてるかな?
1. マインドの「直感」は完全に間違っていることが多い。
2. マインドは「絶対的」はなく「相対的・比較的」に考える。
3. マインドは物事に慣れるようにできている。
4. ところが私たちは、3に気づいていない。
はい!自分と人を比べたら、幸福度が下がるんでしたよね!
うん。僕、あれからちょっと気を付けてるんだ。自分は自分、他人は他人って考えようって。インスタとかも、前ほどチェックしないようにしてる。
それはいい心がけね!じゃあ今日は、引き続き3と4について学んでいきましょう。
3. マインドは物事に慣れるようにできている。
4. ところが私たちは、3に気づいていない。
・・・この2つですね。
「快楽順応」って何?
ヨウタ君もアケミちゃんも、「快楽順応」っていう言葉は聞いたことないよね?
実は私がこの講座で学んだ中で、最も役に立っているコンセプトの1つなの。英語ではhedonic adaptationというんだけど、「幸福感は経験していく度にどんどん薄れていく」という現象を指すの。
「幸福感は経験していく度にどんどん薄れていく」・・・?なんだかよく分からないんですけど・・・。
そうよね。例がないと分かりにくいかな。・・・じゃあアケミちゃん、最近何か新しいものを買ってもらったりした?
えっと・・・。あ、私の誕生日が1ヶ月前だったんです。その時、新しいバッグを買ってもらいました!
まだよく分からないな。アケミちゃんのバッグと、その「快楽順応」ってどう関係があるんですか?
私たちのマインドは素早く慣れてしまう!
アケミちゃん、そのバッグをもらった時とても嬉しかったでしょう?
はい!近所のデパートで見かけてから、ずっと欲しいと思ってたから。
じゃあその時の嬉しさの度合いを1から10で表したら、当然10だよね?
じゃあ、1ヶ月経った今はどうかな?嬉しさの度合いはまだ10のまま?
え、そう言われると・・・。うーん、正直10ではないかな。もちろんすごく気に入ってるけど、使い始めてもう1ヶ月経ってるから。・・・8くらいかな。
うん・・・。不思議だけど。・・・慣れちゃったからかな。
そうなのよ。そしてこれは、アケミちゃんだけではなくみんなに起こることなの。もちろん私も含めてね。
そうか、この現象を「快楽順応」って言うんですね!どんなに気に入っているものでも、しばらくしたらあるのが当然になっちゃうから、最初に手に入れた時の感動は徐々に薄れていく。
その通り!そしてこのマインドの働きを理解していないと、どうなってしまうかわかる?
・・・新しいものがたくさん欲しくなるかも。もう持ってる物に対する喜びが薄れちゃうから。
そっか。僕の叔母さんいつも新しい服ばかり買ってるけど、それが原因なのかな?
「地位材」ではなく「経験」に投資しよう!
そうかもしれないわね。もちろんそれに見合う収入と買った物を収納するスペースがあれば良いけど、そうじゃないケースも多いでしょう。だからこそ、断捨離を繰り返す人がたくさんいるのよ。
えー、なんだか怖いな。物を買っても買っても幸せになれないなんて!
じゃあ、一体どうすればいいんですか?物を買うなってこと?
いやいや、そこまで極端じゃなくてもいいのよ!ただ「快楽順応」の仕組みは理解していれば、無駄な買い物は減るんじゃないかな。
特に「地位材」と呼ばれる「周囲と比較することで満足を得られる財」にお金を使うことは避けたいわね。つまり「友達が持っているから」という理由だけで何かを手に入れても、その幸せは続かないってこと。
なんだか、だんだん分かってきました。でもそれだったら、何にお金を使えば幸せになれるんだろう?
おすすめは旅行やワークショップなどの「体験」ね。その場限りで終わってしまうから、マインドが「快楽順応」することができないのよ。もちろん他人と比較するんじゃなくて、自分が本当にやりたいことを選ばないと意味がないけどね
分かりました!これからはお買い物する時に気を付けます!
僕もこれからは、「快楽順応」っていう言葉を意識してみます!
まとめ
- 人間のマインド(意識)は物事に慣れてしまうという性質を持っており、この現象は「快楽順応」と呼ばれる。
- 逆に「体験」はマインドが「快楽順応」する前に終わってしまうので、単に物を手に入れるよりも満足感が長続きする傾向がある。
保護者の方へ
「快楽順応」の仕組みを知っていれば、無駄な出費が減るだけでなく人生の満足度が高まります。何かをおねだりされた時、値段以外にも「本当に必要なのか」、「どの位の期間使えるのか」、「どの位の期間、満足度が続きそうなのか」、「使えなくなったらどのように処分するのか」などを一緒に考慮する習慣を今からつけると、賢く買い物のできる大人に成長するでしょう。