イエール大学の「幸福講座」とは アメリカの名門校イエール大学で教鞭を取るローリー・サントス心理学教授が、MOOC(Massive Open Online Courses)のプロバイダーCourseraを通じ、無料で提供している”The Science of Well-Being”という講座のことです。https://www.coursera.org/learn/the-science-of-well-being この記事は同講座の内容を担当ライターが個人的な見解も混え、高校生にも分かりやすいように解説したものです。従って同講座の内容に関する全著作権は、サントス教授および講座の提供者であるCourseraに帰属します。
登場人物 サヤコ 英語講師&コーチ。シドニーのマーケティング業界で長年働いた後、地元岡山で起業。10代の学生をサポートしながら、自らも「人生100年時代」におけるベストな生き方を模索中。
ヨウタ サッカー部所属の高校2年生。海外に興味があり、留学するのが夢。なりたい職業はまだ決まっていないが、出世はしたい!と思っている。趣味はゲームとスポーツ観戦。
アケミ 演劇部所属の高校1年生。将来の夢は作家だが、親には収入が安定している公務員か看護師になれと言われている。入学祝いにスマホを買ってもらってから、ちょっと寝不足気味・・・。
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「成功したい」と思うのは間違い? アケミちゃん、ヨウタ君、こんにちは!まずは今までのおさらいね!高収入、高学歴、仕事の成功、素敵なパートナー、高級品 見栄えの良いルックス、名声 = 幸せになれる、というのは実は誤解。 マインド(意識)は「絶対的」ではなく「比較的」に物事を判断するので、自分と人を比べる機会が多いとより不幸になる。 マインド(意識)は物事にすぐ慣れてしまう「快楽順応」という性質を持っているので、幸福度を高くするためには「物(特に地位材)」よりも旅行などの「経験」にお金をかける方が幸せになれる。
そうですね。人間のマインドって不思議だなあと思いました。
・・・でも僕、まだちょっと納得いかないんです。僕はやっぱりいわゆる「いい仕事」に就きたいし、成功したい。それが悪いこととは、どうしても思えないんですけど。じゃないと、頑張って勉強する気を失っちゃうっていうか・・・。
ヨウタ君、とてもいい質問ね!もちろんそんな風に思うこと自体が悪い訳じゃないのよ。サントス教授もこの講座の中で”Wanting the right parts of what we already want”、つまり「私たちがすでに欲しがっているものの中から、”正しい部分”を欲しがること」 が大切だとコメントしているの。
「いい仕事」って何? じゃあ質問するけど、2人にとって「いい仕事」ってどんな仕事なのかな?
うーん、やっぱりお金をたくさんもらえる仕事ですね・・・。こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、やっぱり僕としてはそこは譲れないです。
もちろんそれはごく自然な考え方よね。じゃあアケミちゃんは?
そうですね・・・。お金も大事だけど、一緒に働く人も大事なんじゃないかなあ。どんなにお給料が良くても、職場の雰囲気がギスギスしていたらいやだから。
・・・やっぱり自分の好きな仕事をしたいですね。うちの親は安定している公務員か看護師になれって言うんですけど、私はどうもピンとこなくて。
そっか。アケミちゃんは小説家になりたいんだよね。それはどうして?
小さい頃から本読むのが好きだったし、作文や読書感想文を書くのが得意だったんです。中学校の時に、賞をもらったこともあるんですよ。
僕はアケミちゃんみたいにはっきりとなりたい職業が決まってるわけじゃないけど、英語と数学が得意だからこの2つを使える仕事がいいなあ。仕事を見つける前に、留学もしてみたいし。
つまり2人とも、自分が好きで得意なことを活かせる仕事に就きたいってことだよね。それプラス、お給料と人間関係も良ければ満足だと。
そうですね!ずっと働くわけだから、苦手なことはやりたくないなあ。
重要なのは「強み」を活かすこと! 実はその考え方、とても正しいのよ。幸せになるには自分のsignature strengths 、つまり「代表的な強み」 を常日頃使えるような環境に身を置くことが大事だとされているの。そして仕事は、この強みを活かせる典型的な場という訳ね。
へー、なんだかうれしいな!でも僕の強みってなんだろう?
学生の時って「自分の強み=得意な教科」と考えがちだけど、実は強みってもっと幅広いのよ。例えば私の強みの1つに「寛容さ」があるんだけど、これは先生業に就いている人や部下のいる人にはとても大事なことなの。その部分が弱いと、どうしてもすぐに理解できない人に対して短気になってしまうでしょう?それだと相手が萎縮してしまうから。
あ、そっか。じゃあ僕にも、もっと意外な強みが色々あるのかな?
もちろんそうだと思うよ!こういった診断テスト以外にも、今まで周りの人からかけられた褒め言葉を、紙に書いて整理してみるのも良い方法ね。
それだったらすぐできそうですね!私はよく、新しいことを覚えるのが早いって言われます。
僕は・・・人前で話すのが結構得意かも。グループで何かやる時は、結局いつも僕が発表係になるんです。
2人ともいい感じね!そうやってどんどん「強みリスト」に自分が得意なことを書いていくと、意外な職業に向いていることが分かるかもしれないわね。皮肉なことに、自分の強みには案外気づいていない人が多いのよ。本人にとってはあまりにも自然にできちゃうことだから、強みとさえ思っていないわけね。
強みX好きなことで「フロー」が生まれる! なんだか、楽しくなってきちゃいました。仕事って、大変なことばかりじゃないんですね!
その通り!仕事は生活に必要なお金を稼ぐだけでなく、私たち一人ひとりが強みを発揮できる場でもあるのよ。
強みを活かす意外にも、自分にとって良い仕事を探すコツはありますか?
ベストなのは、自分が好きで強みを生かすことができる仕事を見つけることね。そうすればフロー状態 に入ることができるから。
英語のflow 、直訳したら「流れ」のことね。でもサントス教授が使っているフローは、時の流れを忘れるくらい作業に没頭している状態のことなの。2人も何かに夢中になっていたら、意識しないうちに時間があっという間に経つでしょう?
まとめ 人は自分の「強み」を活かせる環境を選び「フロー状態」に入ることによって、ごく自然に幸せを感じることができる。 自分の「強み」を知るためには、ネットの診断テストを利用したりよく言われる褒め言葉を書き出してみると良い。 保護者の方へ 進路選択の時、親御さんはついつい自分の時代でベストだった方法をお子さんにも勧めてしまいがちですが、昭和・平成と令和では時代も環境も全く違います。20年前には羽振りの良かった業界や大企業が今では青色吐息だったり、YouTuberのような以前は存在さえしなかった職業がどんどん出没しています。幸いネットを使えば容易にリサーチすることが可能なので、AIの普及も踏まえてお子さんの興味や強みを活かせる場を模索していただければと思います。