みなさんこんにちは!
子どもたちの育ちもお母さんの子育ても応援したい、児童精神科医のなおちゅんです。
どうぞよろしくお願いします。
今回は、インターネットやゲームへの依存に関して、第2弾。
お子さんのインターネット依存に関して家族にできることについて書いてみようと思います。
ちなみに前回の記事はこちらです。
Contents
インターネット依存から脱出するための環境を整えよう
お子さんがインターネット依存状態になっているとき、ご家族としては一刻も早くインターネット依存をやめさせなくては、という思いが強くなっていることと思います。でも、だからといって強制的にスマホやパソコンを取り上げたりインターネット回線を切断したりすると、子どもを心配する親の思いは子どもには伝わらず、大切なものをいきなり奪われた!と反発したりなんとかしてインターネットを使い続ける別の方法を模索したりと逆効果になることもあります。
まずは、次の4つの点を心がけて接してみてください。
- 子どもにとって、インターネットは重要な意味を持つ(子どもにとっては自分を守るため・自信を取り戻すための大切な世界である)ということを理解する
- インターネットの接続をいきなり切るのではなく、子どもと話し合って子どもが納得した上で切断する
- インターネット以外の時間を増やすことでインターネットの時間を減らすようにする
- 子どものよいところを認めて、褒める(お子さんの、インターネットをやりすぎること 以外の面に目を向ける)
インターネット依存から抜け出すのは容易ではなく、一進一退を繰り返しながら徐々に進んでいくものです。不登校やひきこもり状態になっている場合、こうした状態をすぐに改善するのは難しいとしても、健康によくない生活をしていることは見過ごせないという姿勢で、お子さんの健康が心から心配であることを伝えます。
まずは、3食きちんと食べること、適度に体を動かすこと、入浴や歯磨きなどの保清、生活リズムを整えることなど、基本的なことから始めていくとよいと思います。
家族にできること
少しでも気になることがあれば、本人に伝えよう
お子さんは自分と同じように長時間インターネットをしている仲間たちとつながっているので、自分がインターネットをやり過ぎているという自覚はあまりありません。なので、子どもの様子で少しでも気になることがあれば、それを伝えることが大切です。
ただし、夢中でインターネットをしているときは避け、していないとき(始める前など)に声を掛けます。責めるような口調にならないよう、穏やかに「あなたを信頼しているけれど、最近ちょっと心配」と、冷静に話し合う姿勢を示します。
素直に耳を傾けるようであれば、一緒にインターネット依存度チェックを行い、インターネット依存症という病気があることを話してあげるとよいと思います。
インターネット依存度テスト(久里浜医療センター)
インターネットの 使用時間を記録するように勧め、1日どれくらい使っているか確認させるのもよいでしょう。
実際、こうした親の働きかけによって、自分がどれだけ時間を浪費しているかに気付き、インターネット使用をコントロールできるようになった子もいるそうです。
インターネット依存について学ぶ
まずは親がインターネット依存やインターネットそのものについて知識を深める必要があります。インターネット関連用語やサービスの仕組み、どんなコンテンツがあってどんなサービスが人気なのか、何がそんなに面白いのか、…。
ゲームやSNSなど、今お子さんが夢中になっているサービスやコンテンツを親御さんも体験してみられるのもよいと思います。親がネットの魅力を理解していると分かれば、子どもも話がしやすくなります。そして親にとっても、ネットについて知識があった方が子どものちょっとした言葉から変化を察知しやすくなるでしょう。
インターネット依存症の裏にある問題を解決する
ネット依存のきっかけの背景にさまざまな悩みやトラブルが隠れていることも少なくありません。たとえば、いじめや嫌がらせを含む学校での対人関係、勉強や部活のストレス、親子やきょうだい間の関係性の難しさなどです。
インターネット依存が疑われるときは、怒るよりも前に、子どもの心に危機が迫っていないかをまず気にかけてみましょう。子ども本人も認めたくなかったり話しにくかったりで、なかなか正直に打ち明けてくれないかもしれませんが、根気よくコミュニケーションをとって問題を共有し、解決策を講じることが先決です。
第三者に相談する
子どもが家族の働きかけには応じないとき、医療機関や自治体のメンタルヘルス相談窓口などの専門家や信頼できる第三者などから子どもに働きかけてもらうことでうまくいくこともあります。
第三者が入ることで、感情的にならずに客観的に考えることができ、閉塞状態を打ち破りやすくなります。本人が信頼していて、インターネット依存症のことをよく理解している人に関わってもらえればベストです。たとえば年上の親戚や恩師などで、親身になってくれる人がいればお願いしてみましょう。子どもがパニックになったり暴れたりすることもあるので、そういう懸念も事前に伝えておきましょう。
生活リズムを整える
オンラインゲームが最も盛り上がるのは、利用者が増える深夜です。チャットやSNSも、家族が寝静まってから思う存分やるということが多くなります。そのため、インターネット依存では多くの場合昼夜逆転がみられるようになります。
昼夜逆転や睡眠不足は不登校につながりますし、「昼間活動し、夜休む」という人間本来のリズムと異なる不規則な生活が続くと、頭痛・食欲不振・倦怠感など健康にも悪影響を及ぼします。
生活リズムを整える要となるのは、睡眠と覚醒です。ともかく朝は起きるようにしましょう。そして3食きちんと栄養のあるものを、できれば毎日同じ時間に食べます。睡眠時間を確保するために、徐々にネット使用を減らし、早く寝る生活へと整えていきましょう。
環境を整える
子どもは、自分が学校や家庭などリアルな世界で不全感や居心地の悪さを感じているとインターネットの世界へ逃げたくなります。家庭が安全基地の役割を果たしていると子どもが感じるようになれば、辛いことがあっても子どもはインターネットに逃げ込まなくてすみます。家族でいることが楽しい、何があっても家族が支えてくれる、といった安心感を子どもが感じられるようになることが最も大切です。
結果はすぐには出ないかもしれませんが、どんなことでも話しやすい雰囲気づくりを心掛け、家族みんなで協力してインターネット依存から抜け出す作戦を立てられるといいと思います。
ルールを作る
インターネットを完全に断ち切るより、パソコンやスマホの使い方のルールを決めましょう。なぜそうするのか理由を説明し、子どもも納得した上でルールを設けるようにしてください。同時にインターネットのマナーやリスク、インターネット依存症などについても教え、子どもを守るためのルールであることを理解させましょう。
ルールは家庭ごとに違ってくると思います。子どもの意見もよく聞き、子どもの実態に合ったルールを子どもと相談しながら作ってください。目に入るところに貼っておくとよいと思います。
子どもの成長や環境の変化に応じてルールの見直しが必要になることもあります。そして、もしもルールを守れなかったときどうするかも決めておきましょう。
仲間を作る
インターネット依存の子どもを持つ親の多くは、悩み、追い詰められています。「自分の躾が悪かった」とご自分を責め、心の不調をきたすこともあります。子どもの状況は成長とともに長期にわたって一進一退するので、親にも長期戦の覚悟が必要です。相談相手を見つけることができると心強いでしょう。また、家族会などで「悩んでいるのは自分だけではない」と分かったり、親同士で共感し合ったり、情報交換して支え合ったりする中で解決の糸口が見えてくることもあります。親の心が安定すると子どもへの対応も柔らかくなり、よい循環が起きていくはずです。
おわりに
最後までお読みくださりありがとうございました。
インターネットによって多様なサービスが実現して便利になったのは間違いありませんが、インターネット依存ではインターネット上のコンテンツがリアルな世界の魅力を超える逃げ場としても機能してしまっているように感じます。
依存かそうでないかの境目は曖昧で判断は難しく、いずれにしてもインターネットの使い過ぎは親としては気になるところですが、親がよかれと思う方向へ子どもをコントロールして導こうとしてもたいていはうまくいかないものです。
かくいう私も、思春期の息子がYouTubeを見続けたり友達とずっとLINEしていたりすることにイライラする母親のひとり。動画の話で一緒に楽しく盛り上がってみたり、ブツブツ苦言を呈してしまったり、毎日の関わりを試行錯誤しながらいつか息子に伝わるといいなと思っているところです。
インターネットへの依存しすぎはよくないとしても、インターネットがお子さんにとって大切なもので心の支えにもなっているという視点を持って、お子さんともインターネットとも敵対しないかたちでお子さんと根気よくコミュニケーションを取り続けていただけたらいいなと思っています。