みなさんこんにちは!
子どもたちの育ちもお母さんの子育ても応援したい、児童精神科医のなおちゅんです。
どうぞよろしくお願いします。
今回は、中学生のお子さんにまつわるこちらのご相談です。
「現在息子が、授業中ボーッとしているようで、宿題もテキトーにしかやりません。このままだと高校進学さえ危うい状態です。中卒で働くのはイヤと言います。親としてどう対処してやればよいでしょうか?」
「男子の母です。学校の勉強も宿題もいちおう”こなす”のですが、ほとんど頭に入っていないようです。私が厳しく言うからか塾には通っていますが、テストの点数には反映されません。どうすれば『困るのは自分自身』だとわかってくれるでしょうか?」
中学生のお母さんの切実なお悩みです。
「高校生.com」というサイト内ではありますが、高校生のお母さんたちも同じようなお悩みを抱えていらっしゃるかもしれませんし、この場を借りてお答えしてみようと思います。
Contents
身もふたもないことを言ってしまいますが…
「子ども自身に”目的をもって”“意義を感じて”勉強に取り組んでほしい」という願いは、多くの親御さんが持っていらっしゃると思います。
勉強を自分事ととらえて自ら積極的に取り組んでほしいところですが、勉強しろと言われたからと言ってするわけではなく、万が一勉強に取り掛かったとしてもそれはもはや「自分から」ではないというパラドックス。
これは我が家でもあるあるの光景です(笑)。
結論から言ってしまうと、親の声掛けですぐに子どもが自ら勉強の必要性を感じて積極的に勉強し始めることはない、と私は思っています。身もふたもなくてごめんなさい。
それじゃあ、親はどうしてやればいいの? 何かできることはないの? と思ってくださるお母さんのために、こんなふうに関わっていただけたらと思うアイデアをいくつかご紹介します。
① 「わが子はがんばろうと思っているはず」と信じる
まず大前提として、子どもはどの子も「できるならうまくやりたい・がんばりたい」と思っているはず、とおとなが信じてあげることが大切だと私は思っています。わざわざ失敗したいわけがない、でも思うようにうまくいかないことがある、と。
(この考え方を私は勝手に「子ども性善説」と呼んでいます。)
そう考えると、子どもが積極的に勉強をしないことに対する怒りよりも「なぜがんばろうとしないんだろう?」という疑問が湧いてくるのではないでしょうか。
② 勉強に行き詰っていないか注意を払う
がんばりたいのにがんばれていない場合、「どうせうまくいかない」と感じて前向きになれなかったり、すでに心が折れてしまったりしている可能性が考えられます。
数学や英語などは積み重ねが大事なので、これまでにクリアできていない箇所を残したままだといざ目の前の学習に取り組もうと思ってもどうにも理解できないといったことが起こります。こうした積み残しがあることが今がんばれない原因なのであれば、一旦数年前までさかのぼってわからないところを潰すことが先決です。あの有名な『ビリギャル』でも、主人公さやかちゃんは慶応大学の受験を目指して小学校の範囲から復習していましたが、これは高校生でも通用するやり方ということです。
それから、もしかしたらもともと読んだり書いたりすることにとても大きな問題を抱えているかもしれません。
たとえば、もしもお子さんが本のページを開くと単語や行がページの上を動き回っているように見えるとしても、これまでそういうふうに見える経験しかしたことがなければそれを普通だと思ってわざわざ困りごととしては訴えてこないこともあります。
そうでなくても、文章はちゃんと読めるのに同級生たちのように読みながら意味をすらすらと理解することはできなかったり、読んで意味は理解できても自分が字を書くことはとても苦手で授業のノートがうまく取れなかったり課題がこなせなかったりということもありえます。
このような本格的な読み書きの苦手さが疑われる場合は、一度専門機関へご相談されることをおすすめします。
③ 勉強の出来不出来にかかわらず、親の愛情が子どもに伝わるように
勉強に前向きに取り組まない子どもを非難したり叱ったりしてばかりになってしまうことで最も心配なのは、子どもが「自分は親に好かれていない」「自分はダメな人間だ」と感じる恐れがあることです。それは本当にもったいないと思います。
勉強はできないよりできたほうがいいとしても、勉強がすべてではないし、勉強が苦手でもお子さんの人としての価値が下がるわけでも何でもないはず。
親の心配や焦りから「勉強しなさい・できるようになりなさい」と伝えることは、「今はしていない・できていない」と子どもを否定することになってしまいかねません。
それよりも、勉強ができてもできなくてもお子さんが自分自身を大事な存在だと感じられるようなコミュニケーションを優先したほうがよいのではないでしょうか。
お子さんのよいところや今できているところにをしっかり見つけて、それを嬉しく思っていることをぜひ積極的にお子さんに伝えてあげていただきたいと思います。
④ 日頃のかかわりの中で、勉強に対する親の考えを話してみる
お子さんが「自分は親から大事にされている」「自分には結構いいところある」などと感じられるようになっていたら、親御さんの勉強に対する考えを伝えてみてください。
穏やかに、真剣に伝えることが目標です。
子どもが勉強しないことに親が焦るのは、すでにおとなになった親には「子どものとき勉強をきちんと積み重ねておくにこしたことはない」と勉強の重要性がわかっているからです。
でも、もしかしたら子どもにはそれがまだわからないのかもしれません。
重要性をわかってはいても「自分に勉強は向いていない」「今さら勉強したって間に合わない」などと考えているのかもしれません。
お子さんにはぜひ、なぜ親御さんが勉強の積み重ねを大事だと感じているのかを丁寧に伝えたり、諦めモードに入っているお子さんには今からでも挽回するやりかたはあると説明したりしてあげてください。
じつはそのときに大事なのは、お子さんが親御さんの話を受け入れる態勢ができていること。
お子さんが親御さんの話を好ましいものと受け止めたり、聞きたくなる気持ちで聞こうとしたりすると、お子さんの脳内で親御さんの話した内容がしっかり理解されて定着もしやすくなります。
ヒトの脳は入ってきた情報をすべて公平には処理せず、感情でラベリングして好ましいものを重点的に受け止め、そうでないものはサラッと受け流すようにできているからです。
このあたりの話は、林成之先生の書籍で「A10神経」の仕組みとして詳しく説明されています。
だからこそ、④で勉強の大切さを伝える以前に③で親子のコミュニケーションを良好にすることが優先していただきたいのです。そのほうが親の言いたいことが子どもに伝わりやすいわけですから…。
おわりに
今回は、わが子に積極的に勉強に取り組んでほしいと願う中学生の親御さんおふたりからのご質問にお答えしてみました。
かく言う私も、頭ではこうするのがいいとわかっていても、わが子の姿を見てイラっとしてついガミガミと言ってしまうこともしばしばです。
100%完璧にはできなくても、親から子どもへ楽に大事なことを伝えられる機会が増えたらいいなと願っています。お互いがんばりましょう!
最後までお読みくださりありがとうございました。