今回のお悩み

私には高校2年生になる息子がいるのですが、最近あろうことか芸人になりたいと言い出しました。息子は確かにおもしろい子で、小さいときから有名人のものまねをして私たちを笑わせていました。最近では文化祭で漫才をして、なかなかの評判だったようです。 息子には自分の進みたい道へ進んでほしいという思いはあります。しかし、芸人になってきちんと食べて行けるのか、大人になっても私たちと長々と同居したり、私たちが金銭的援助をしなければいけなくなるのではと思い、心配です。世の中はそんなに甘くないことを、どうやったらわからせることができるでしょうか。

回答

芸人という安定とはほど遠い道へ進むことを考えている息子さんのことを、親として心配なさっておられるということ、お気持ちをお察しします。しかし、ここで覚えておかなければいけないのは、たとえ親と子の関係であろうと、あなたと息子さんはふたりの違う人間であり、息子さんの人生は息子さんのものであり、あなたのものではないということです。

臨床心理士としていろいろな患者さんとカウンセリングをする中で「留学すればよかった」「あの人に告白すればよかった」など、あれをしておけばよかった、という後悔をよく耳にします。それにくらべて、やったことに対する後悔を聞くことは稀です。やったけれどもうまく行かなかった、という後悔と、やらなかったので、もしもやっていたら今どうなっていたかは永遠にわからない、という後悔では、後悔の深さが違うのです。

息子さんと長く同居したり、金銭的援助をする気がないのであれば、そのことを息子さんにハッキリ伝えるべきでしょう。「世の中は甘くない」とおっしゃられますが、芸人になっても、会社員になっても、世の中は甘くないものです。そしてこの世の中には、あなたの息子さんのように、子供のときから人を笑わせるのが好きで、高校生のときから芸人を目指し、実際に芸人を職業として生活している人だっているのです。それと同じように、一度は芸人を目指したものの、あきらめたり、ほかの職業の方が向いていることがわかって、方向転換をした人もいます。だからと言って、芸人になろうとしていた時間は無駄だったとは言えないのではないでしょうか。もしも息子さんが芸人として成功しなかったとしても、人前でおもしろく話をする技術は、いろいろな職業に使えるものです。

芸人になるのをあきらめるよう、説得しようとすることなどはやめましょう。私たちは子供たちの人生をコントロールできませんし、しようとするべきではありません。息子さんがいつか後悔することのないように、自分の進むべき道を彼に選ばせてあげてください。

この記事でご提供している情報は、心理療法の代わりとなるものではありません。心の不調を感じておられる方は、心療内科、または精神科での診察をおすすめいたします。